開発者が語るX1 Carbon - プロジェクト

X1 Carbon

1回目の開発者が語るX1 Carbon - 工業デザインに続き、開発者たちの生の声をお届けします。

2回目は、プロジェクトについて、大和開発チームの指令塔の製品開発統括担当とテクニカル・プロジェクトマネージャーが語ります。今回の二人は、Xシリーズを多く担当した経験豊かな開発者です。初代X1も同じコンビが主導しました。


- X1 Carbonは、ThinkPad Xシリーズでは初のUltrabook™になります。

田保: 実は、Ultrabookを前提にしたプロジェクトではありませんでした。

X1 Carbonの企画が始まったのは、2010年の終わり頃です。第一に目指したのは、"BYOPC(Bring Your Own PC)"や"IT Consumerization"の流れを受けて、IT部門から与えられるのではなく、企業のお客様自らが「これを使いたい!会社に持ち込みたい!」と思うような、素晴らしい製品にすることです。

その中で、「今までのThinkPadを超えるポータビリティー」がキーワードになり、企画の早い段階から初代X1を更に薄型化・軽量化する事に決めて、かなり長い時間をかけて検討が行われました。

: 企画段階の終盤でUltrabookのスペックが公開されたのですが、既にほぼ準拠していました。

ThinkPadはたまに先進的過ぎて、お客様に受け入れられにくい製品なる事があります(笑)。今回は良いタイミングだったと思います。しかし、企画が固まり開発フェーズに入るまでがとても長かった・・・。

田保: 開発スタートまでに制作したデザイン・モデルが、とにかく多かった事が印象に残っています。意図的に今までのThinkPadのデザインを大きく変える、かなりアグレッシブなデザイン・モデルも存在しました。開発スタートした後も、実は色々変更があって・・・更にデザイン・モデルは増えました。


- 前回のインタビューでも、最初はもっとコンシューマー製品寄りの企画だったと聞きました。

田保: そうでしたが、結果的にビジネス寄りに軌道修正したのは、正しかったと思います。

今のところ、そのビジネスライクなスタイルも含め、とても好評です。私のX1 Carbonへの印象は、ガチガチの「ビジネス」ではなく「ビジネス・カジュアル」です。例えると、ジャケットにノーネクタイのビジネスマン。最近、IT業界でも多い、「ビジネス・カジュアル」スタイルが良く似合うユーザー像を抱きます。

: X1 Carbonは、ThinkPad Classicシリーズの中では、特殊なスタイルの製品だと思っています。

初代X1のDNAを受け継いで、Classicシリーズでは通常できない事が満載です。最高級のCarbonを使ったり、最小限のコネクタ構成にしたり、思い切った製品になっていると思います。初代X1から改善したところも多いですよ。


- 初代X1のDNAを受け継ぎながら、改善も実現しているんですね?具体的には?

田保: 初代X1は元々、アグレッシブな製品の企画でした。嬉しい事にお客様からも好評です。

当時、Classicシリーズとしては最も薄いボディの中に標準電圧のCPUを入れ、ゴリラ®ガラスを使用しずば抜けた丈夫さを持ち、シンプルでモダンなアイソレーション・キーボードを搭載しスタイリッシュである、など良い点が多かったのですが、改善できる点もありました。

X1 Carbonは、初代X1より小さく軽く薄くなりました。しかも、LCD画面のサイズは14インチです。初代X1の13インチよりも大きくしたのに、小さく軽く薄くできた事は特筆すべき点です。

また、初代X1に対してお客さまから要望のあったLCD画面についても、X1 Carbonでは早い段階から変えようと決めていました。光沢のなく映り込みが少ないもので、1600 x 900ピクセルの高解像度LCDに変更しました。

: 初代X1の企画は思い切っていて、「今後のThinkPadの方向性」を提示するものだったと思います。

X1もClassicシリーズなので、様々な企業ユーザーならではの要求が多くありましたが、「本気で今後の方向性を提示するなら、このX1しかない」と考え、様々な新しい事にチャレンジしました。「Classicシリーズだから、それはできない」という言い訳を、打破した製品だと言えます。

レノボ自身、IdeaPadが色んな事にチャレンジしているので、ThinkPadができない事は実は何もないと思います。

初代X1の裏話をしますと、スケジュール的にギリギリの選択を迫られた時もあります。成田空港でトランジットするエグゼクティブを拘束して、デザイン・モデルのレビューをした事もあります。X1 Carbonでは幸いそのような経験はなかったのですが、ビックリするような事はありました。


- ビックリするような事?面白そうですね。支障のない範囲で、苦労した点や開発秘話を聞かせてください。

田保: はい。一番苦労した点は、パッケージングです。

先ほども言ったとおり、LCD画面を14インチに大型化しながら小さく軽く薄くする事は・・・諦めたくなるほど・・・でした。その点は、機構設計部門が大きな貢献をしています。素材を変えたり、立体パズルのようなレイアウトを工夫したり、隙間を詰めたり・・・数限りない検討が行われました。それでも当初は、初代X1並みのサイズにしかなりませんでした。

それをもう一度、機構設計部門と電気設計部門とデザイン部門が中心となって、一からやり直して大幅に改善した時は、「奇跡が起きた!」と感動しました。

: このプロジェクトが荒波にもまれても転覆しなかったのは、運も味方に付いていてくれたのかもしれません。本当に最後まで、実現できるとは自分でも思っていませんでした(笑)。

開発チーム全員が同じだと思う、X1 Carbonの三大ビックリをお話します。

1. 本当に実現できた事
2. 主要メンバーの入替
3. 大どんでん返し

主要メンバーの入替や大どんでん返しについては、残念ながら細かくはお話できません。しかし、製品の方向性を大きく変える仕様変更だった事には、間違いありません。スケジュールを維持するため、かなり特殊な開発プロセスを実施しました。はやり、一筋縄ではいきませんでした。アグレッシブな製品の宿命ですけどね。


- 苦労をしたX1 Carbonのテスト機を二人とも使っていますが、正直な感想を聞かせてください。

田保: はい。まず、なぜ開発途中の製品を使っているかを、先にお話します。

拷問のような過酷なテストは、通常の開発プロセスの中で行っていますが、それとは別に、オフィスの日常的な使い方で問題が出ないかを確認するために使っています。「ゲリラ・テスト」とも呼ばれています。

使ってみて一番印象に残っているのは、キーボードです。初代X1もとても高い評価を受けたキーボードでしたが、今回は更に薄型化したのにも関わらず、とても良いタッチーフィーリングです。他社のUltrabookも研究していて、キーボードを打ち試ししてみましたが、X1 Carbonは抜群に良いと思います。

: シンプルに答えます。軽い薄い。これが一番の感想です。

そして、持った感じが手に馴染む。角張っていないデザインのお陰だと思います。最後に、丈夫。Carbonと金属の素材の良さが活かされた、本当にしっかりしたボディです。


- 総合的なユーザーエクスペリエンスが素晴らしそうですね。最後に将来に向けての話はありますか?

田保: 毎回、新製品には何かしらの新しい事を取り入れて行きたいと思います。

特にX1シリーズのようなアグレッシブな製品は、開発者のモチベーションも高いのが特徴ですから、自然とそういう空気が形成されます。もちろん、新しい事にチャレンジするのは、X1シリーズだけでなく、どんな製品の開発でも同じです。"Pioneering"をキーワードとして、今後もお客様に喜ばれる製品の開発を目指します。

ThinkPad X1 Carbonを持った、田保光雄

 

: まずは頭を真っ白にしたいですね(笑)。毎回、どのような製品の開発でもそれぞれの特徴があるので、いつも新鮮な気持ちでいたいと思います。

私はいつも、「エンジニアさんがハッピーになるプロジェクト」となるように心がけています。エンジニアさんが、お客様からの賞賛の声を浴びたり、栄えある賞を受賞したり、新しい技術を確立して特許を取得してもらえると嬉しいです。

私のテクニカル・プロジェクトマネージャーの役割というのは、色んな事を調整し指示する、いわば開発チームの司令塔です。エンジニアさんがハッピーで、チームのモチベーションを高く維持する事が、プロジェクトを成功させる最大の要因だと考えています。

今後も、エンジニアさんが、そして何よりお客様がハッピーになる仕事がしたいと思います。

ThinkPad X1 Carbonを持った、森直樹