開発者が語るThinkPad Tablet 2 - 機構設計・工業デザイン

ThinkPad Tablet 2

1回目の開発者が語るThinkPad Tablet 2 - プロジェクトに続き、開発者たちの生の声をお届けします。

2回目は、機構設計と工業デザインについて語ります。ポータブルゲーム機の機構設計の経験があるエンジニアと、ThinkPad誕生時からの生え抜きで560・X30・X1、そして初代Tabletも担当したリードデザイナーの2名が、プロジェクトの要であったパッケージングを主導しました。


- 薄くて軽くてカッコよくて良いですね、Tablet 2。まず前回のインタビューで出た、パッケージングの高度化について教えてください。

長谷川: はい。初代から2代目は・・・、

  • 14.5mmから9.8mmへ、5mm近く30%以上の薄型化
  • 約759g(ペンあり)から約590g(ペンあり)へ、150g近く23%の軽量化

ですから、この世界では信じられないくらいの進化です。今後どう進化しようかと悩んでいるくらいです(笑)。

元々初代Tableのコンセプトは、タブレットとはいえThinkPadの品質を維持したままの、しかもデジタイザーペンを内蔵するという、機構設計の観点からはとても難しいものでした。今回も同じコンセプトですが、「薄型化・軽量化」が大きな命題でしたから、更なるチャレンジが必要でした。

振り返ると「よくこのボディに収まったなぁ・・・」というのが素直な感想です。

: 工業デザインの観点からも基本的には同じコンセプトでした。でも、タブレットは「ThinkPadらしさ」を出すのが難しい製品なんです。

ノートPCと比較すると、デザインできるところが少ないのが一番の理由です。有名なキーボードもないですし。その中でもいかに「ThinkPadらしさ」を出していくか。初代でもそうでしたが、結構苦しみました。

基本に忠実に、赤のアクセントを入れたり滑りにくいラバー塗装を施したり。最終的には高級感のあるシンプルな佇まいで、どう見てもThinkPadと言える製品になったと思います。

特に工業デザインではプロポーションが大事なので、薄くなったのは印象をより良くしていると思います。


- 先行したAndroid版のタブレットの経験が、パッケージングに活かされているとも聞きました。しかし、構造自体は少し違うということでした。具体的には?

長谷川: Android版はインナーフレームも筐体もマグネシウム合金製です。それに対し、Tablet 2はマグネシウム合金製のインナーフレームをプラスチックの筐体で囲っています。つまり、Tablet 2はThinkPadのノートPCで良く使う「Roll Cage構造」なんです。

Roll Cage構造の場合、内部には必要最小限のマグネシウム合金を使うので、軽量化が図れます。一方、筐体自体は金属よりもやわらかいプラスチック製なので、堅牢性が課題となります。しかし、Android版と比較しても、充分な堅牢性が得られることがわかっていたので、この構造を採用しました。

全体の堅牢性向上には、高強度ガラス"Dragontrail"を採用したのも効いています。


- 話題のガラス、旭硝子"Dragontrail"ですね。強度はどうですか?

長谷川: Ball Dropテストというガラス面に鉄球を落とすテストがあるんですが、結果はとても優秀です。

もちろんガラスの強度だけでなく、Roll Cage構造や筐体の全体でその衝撃を受けますから、Tablet 2自体が丈夫なんです。今最も有名な他社タブレットと比べても、約2倍の強さを誇っています。

Tablet2は、デジタイザーペンを格納したりスタンダードのUSBを搭載したり、開口部が多くて全体的な強度を保つのが難しいのですが、Roll Cage構造や総合的な機構設計が効いていると言えます。


- デジタイザーペンは随分細くなりましたね。

長谷川:  はい。直径6.5mmの物を使っています。

初代Tabletのペンの直径9.5mmです。中に電池も入っていました。でも、Tablet 2は9.8mm厚ですから・・・。

実は当初、ペンメーカーは精度の高いモノだと、直径5mmと9mmのものしか用意がないと言われたんです。9mm・・・Tablet 2は9.8mm厚ですから・・・。それに5mmでは・・・。

: 細すぎて使い勝手が悪いんです。

通常のボールペン並みの9mmくらいが一番良いのですが、7mmまではユーザビリティーは大きくは落ちないとわかっていました。しかし、7mmでも筐体には厳しかったので、USのユーザーエクスペリエンスのチームともよく相談して、6.5mmに決めました。

長谷川:  結局、ペンメーカーにお願いして、特殊なサイズのペンを新規に開発してもらいました。ThinkPad Helixも同じ太さのデジタイザーペンを搭載しています。


初代TabletとTablet 2のデジタイザーペン及び本体サイズ比較


 

- 初代も2代目もペンにこだわっていますが、そんなに大切な機能なんですか?

: メールを見たりブラウズするだけなら、タブレットは本当に便利です。とにかく見るだけなら。

でもPCってそういうものではなく、何かを作業しますよね?メールだったり画像編集だったりWebページ上で文字をコピーしたり、タブレットを使っている時でも「ノートPCを開くほどではないけど・・・指だけじゃ無理」と思う場面がよくあると思うんですよ。

「細かいところをピックする、あるいはなぞる」には、どうしてもペンが必要なんです。

例えば、ペン無しのタブレットでWebページの文字を選択する時は、いちいちページを拡大して指で範囲を選択して・・・不便ですよね。ペンさえあればさっとできます。痒いところに手が届きます。

やはり今は、ノートPCとタブレットをシームレスにつなぐ製品があってしかるべきで、そのためにはペンが必要だと考えています。

長谷川:  ペンの必要性は嶋さんの言う通りとして(笑)、一つだけ言わせてください。

デジタイザーペン無しのモデルもあるのですが、開発者としては是非ペン有りのモデルを使って欲しいです。ペンを薄い筐体に入れるのは苦労しました。ほとんど無理矢理入れた感じです(笑)。


Tablet 2のデジタイザーペンホルダー

 

- 他に自慢できる事や苦労した事はありますか?

長谷川: 両方ありますね(ニヤリ)。

一つ目の自慢は、本当はあと2mm薄くできる事です。

デザインモデルも存在していました。ペンの部分のみ2mm膨らんで、他は7.8mmフ&##12521;ットというデザインでした。しかし、その案はバッテリー容量が劇的に減ってしまうので、製品競争力の観点でそれはお蔵入りとなりました。

二つ目の自慢は、ウエイトバランスが良い事です。

基板やバッテリーやRoll Cageなどの大物部品が、ほぼシンメトリーにレイアウトされています。縦でも横でも握った時の感覚が変わらない、最適なバランスを保っています。

三つ目の自慢は、進化したキーボードフォリオです。

初代とは違い、ソフトケース無しでタブレットとキーボードフォリオがドッキングできます。角度もビシッと固定でき、その時の姿はほとんどノートPCを開いた時のようです。Helixはタブレットからトランスフォームして、完全にノートPCになりますが、Tablet 2のキーボードフォリオはHelixのシステム側よりコンパクトなので、これはこれで使い勝手が良いと思います。

苦労は・・・とにかく海外出張が多かった事です。開発中は合わせて5-6ヶ月滞在で、もう食傷気味です・・・。


: 自慢できる事は、タブレットの世界を拡げる製品に仕上がったことです。

他社はなかなかできていない事だと思います。「Contents Consumeならタブレット、Contents CreationならノートPC」と言われている今、その間を埋める事がTablet 2はできていると思います。

もちろん、工業デザインもThinkPadらしい高級感が溢れていると自負していますし、使い勝手も含め、お客様の総合的なユーザーエクスペリエンスの完成度には自信があります。

あと一つ。前回のインタビューでも出てきましたが、キーボードフォリオ。使い方をもっと拡げるコンセプトで途中まで進んだので、次回は是非実現したいです。

苦労話は・・・もう忘れました(笑)。


- Tablet 2は本当に大人気ですね。早く私も使ってみたいです。最後に将来に向けての話はありますか?

長谷川: Tablet 2は製品群の中でもエッジの効いたアクセント的存在です。それを担当できたのは嬉しい事ですが、正直に言うとノートPC、特にXシリーズをやってみたいです。

それはそれとして(笑)。タブレットの話に戻すと、今後も薄く軽く小さくするだけでは、他社と同じです。何か新しいチャレンジをしなければいけないと思っています。

それに反するようですが、iPad miniを使ってみて、もっと小さいタブレットもやってみたくなりました。小さいタブレットの世界で、チャレンジした機構設計ってなんだろう?と考えているところです。それにオプション製品ももっと充実させたいですね。


ThinkPad Tablet 2を持った、長谷川英明

 

: 私は家でよくiPadを使っているのですが・・・あ、すいません・・・。今度はTablet 2を買いますが(笑)。

先ほども話した通り、タブレットを使っているとWebページで文字を選択するだけでもイライラして、「こんな事ならノートPCにすれば良かった・・・」と思うことが多々あるわけですが、これなら大丈夫でしょう。

家で寛いで寝そべっている時に、やっぱりノートPCは似合わないんですよ。デジタイザーペン付のTablet 2なら、気軽にストレスなく楽しく「ちょこっとCreation」ができちゃいます。

そんな新しい体験を、これからも世界中に届けたいですね。


ThinkPad Tablet 2を持った、嶋久志